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人と自然にやさしい 『うす焼きせんべい』から 椎茸農家が考える循環型のビジョンとは?

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松花草庵 松下 紀子さん

赤、ピンク、紫、黄色、グリーン…まるでパレットのようにカラフルな野菜や果物のうす焼きせんべい。やさしい色合いに心和むそのおせんべいは、口に入れた瞬間、素材の香りが驚くほど広がります。
四季の移ろいに合わせて素材を変える、自然思い、カラダ思いなお菓子を作っている、椎茸農家『松花草庵』の松下紀子さんに、商品開発からこれから目指す未来についてお伺いしました。

 

—『松花草庵』さんは椎茸農家をされているのですね。椎茸の栽培を初めたきっかけは何だったのですか?

松下さん:もともとうちは農家ではないんです。たまたま椎茸ハウスをやめられる方がいて、「椎茸の栽培をしませんか」って声をかけていただいて。それが椎茸の栽培を始めるきっかけでした。以前夫と、南アルプスの山に行った時に現地の椎茸をバターで炒めて食べたら「お肉より美味しいんじゃないか」というくらい感動した経験もありまして。それもあって、椎茸を栽培することに抵抗もなく始められました。

 

 

— そんな経緯で始められたのですね。椎茸作りでこだわっていることは何ですか?

松下さん:菌床を自分で配合して作っていることです。だから余計なものは入っていませんし、水も蒜山の地下水を汲み上げて、それだけで育てています。
また最近は、工場で温度管理しながら栽培しているところがありますが、私たちは蒜山高原の寒暖の差を利用しながら、椎茸がゆっくり大きく成長するのを待って収穫しています。
そのため食感がコリコリしているのが特徴です。ハウスの中も暗闇ではなく、自然光を入れて明るくして、椎茸がすくすく元気に育つようにしています。自慢の椎茸です。冬場のものは特におすすめです。

 
 

—椎茸の『うす焼きせんべい』は、どのような経緯で生まれたのですか?

松下さん:椎茸の加工品を作ってくれないかと夫から頼まれまして。でも、何を作っていいのかずっと悩んでいて。いろいろ考えたのですが、やはり私が大好きなおせんべいを作りたいなと。
私は「子育てサロン」を月に2回開催しているボランティア団体の代表をさせて頂いているのですが、そこで子どもたちも食べられるようなおせんべいを作れたらいいなと思いました。はじめは、椎茸をまるごと薄焼きにしてみたり、椎茸に粉をまぶしてみたり、スライスしてみたり…。でもうまくいかなくて。
そこで愛知県のえびせん工場や福山の製菓工場に見学に行きました。そこでの作り方にヒントをいただいて、いろいろと試作をしてみたら、納得のいく美味しいものができました。椎茸をトッピングしなくても美味しいのですが、スライスしたものをのせたら、椎茸のいろいろな表情が見れて楽しいかなと思い、今のかたちになりました。
他の野菜や果物類にもアレンジができるので、季節に合わせて、よもぎやイチジク、山菜、トマト、かぼちゃ、パプリカなどのおせんべいも作っています。

 
 
 

—食べると、素材の味が驚くほど口に広がりますが、その美味しさのヒミツは何ですか?

松下さん:原材料にメインの素材を50%以上使って、作っていることです。椎茸せんべいだったら、椎茸を50%以上、野菜や果物のおせんべいだったら、野菜や果物を50%以上使っています。原材料は基本的には4つしか使わないです。主役の素材にでんぷん、油、塩をちょっとずつ。ごぼうなど、子供たちが苦手なものには、少しだけお砂糖を加える時もありますが、調理法を考えて、素材の甘みやうまみを最大限引き出せるように研究しています。食品添加物や化学調味料も使っていませんし、保存がきく商品で食品添加物が入っていないものも珍しいと思います。

 
 
 

——今後、目指していることはなんですか?

松下さん:ここ真庭市は今、循環共生型農業にとても力を入れていまして、私もその取り組みについて考えています。真庭市といえば林業が盛んです。様々な取り組みを積極的に行っていて、間伐材も発電用に使われています。椎茸栽培では広葉樹を使用するのですが、実は持ち込まれた広葉樹は有効活用されていないようです。
そこで私たちは、その広葉樹を椎茸菌床用のおがくずに使えないかと思っています。さらに、椎茸栽培後の菌床には豊富な栄養分が含まれているので、堆肥化して畑で使いたいです。広葉樹をおがくずにして椎茸を育て、その菌床の堆肥で野菜を育てて、おせんべいをつくる。そして、おせんべいを食べた人たちが森林保護活動の協力者となる。という、循環共生型農業ができればいいなと考えています。また、うす焼きせんべいの工場で働きたい人もたくさんいます。おせんべいを作ることで、地元の方たちの雇用拡大につながればいいなと思います。
菌床の堆肥化はあまり進んでいないのですが、近所の方にその堆肥をあげると喜ばれるんです。カブトムシもやってくるので、子供たちも喜びますしね。針葉樹だと緑ばかりですが、広葉樹だと赤黄緑と目も楽しめます。循環共生型でみんなが楽しめることをやりたいですね。

 
   

四季の素材から、地域の暮らしまで考えられてつくられた『素材の味がするうす焼きせんべい』。
カラフルで素材のうまさがたっぷり詰まったそのお味は、「素材ってこんなに美味しいんだ」と驚くお菓子です。『松花草庵』の松下紀子さんありがとうございました!

 

INFORMTAION

松花草庵 (WEBサイト)

〒717-0505 岡山県真庭市蒜山上長田1060-21

0867-66-7301

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